船舶搭載型ADCPデータの補正方法について

  1. はじめに
  2. 船舶搭載型ADCPは船に対する相対的な流速を計測する。 ADCPデータから絶対流速(地球座標系に対する流速)を算出するには、ADCPで計測した船に対する相対流速から船速(対地船速)を減じればよい。ここでは船速はGPS位置データから算出した対地船速を用いる。
    以下に船速およびADCP流速データのそれぞれの補正方法を記述する。

  3. GPSデータの補正方法
  4. GPS位置データは不良データや誤差を含むため、これらを補正した後に船速を求める。GPSデータはADCPで同時収録している1HzのGPS NMEAデータを使用する。GPSデータに含まれる不良データを検出するため、以下の方法を用いる。
    1) GPS位置データから1秒毎に対地船速を算出する。対地船速が19ノット以上の場合、その位置データを不良とする。
    2) GPS位置データから1秒毎に加速度を算出する。加速度が0.5m/s2以上の場合、その位置データを不良とする。
    以上の閾値により不良と判定された位置データは、前後の良好なデータから線形補間した位置データに置き換える。さらに船体動揺やGPS自体の誤差と考えられる短周期の振動を除去するため、20秒の移動平均処理を行う。

  5. ADCPデータの補正方法
  6. ADCPの相対流速データに含まれる各種誤差成分(アライメント誤差、船体動揺誤差)を除去するため、以下の補正処理を行う。

    1) ボトムトラックデータを用いたアライメント誤差の算出
    船体中央軸とトランスデューサ間の取り付け誤差および船首方位計の誤差を総称してアライメント誤差と呼ぶ。アライメント誤差の推定には、ボトムトラックモードで収録したADCPデータを使用する。
    ※ ボトムトラックデータがない場合、直近の試験航海で求めたアライメント誤差を採用する。ボトムトラックデータの有無については、各航海のreadmeを参照。
    1-1) GPS位置データの置き換えと船体動揺誤差補正
    ボトムトラックデータに含まれる位置データを「2. GPSデータの補正方法」により得られた補正済みGPSデータに置き換える。この時、慣性航法装置による船首方位、船体動揺(ロール、ピッチ)データがあれば、船体動揺誤差を補正する。これらの処理は、「VM-DAS」ソフトウエア(Teledyne R. D. Instruments社製)を用いて行われる。
    ※ 船体動揺データの有無については、各航海のreadmeを参照。
    1-2) アライメント誤差の推定
    アライメント誤差は、GPS位置データから求めた対地針路を正として、補正済みボトムトラックデータおよび船首方位から求めた対地針路を比較することで推定する。アライメント誤差の推定にはJoyce(1989)の手法を用いる。この時、船速および船首方位が一定時間安定しており、かつコリレーション(発信波と受信波の相関)が200count(最大255count)以上でエコー強度が60count(最大255count)以上のボトムトラックデータのみを計算に使用する。

    2) 全期間のADCPデータに対するアライメント誤差と船体動揺誤差の補正
    全期間のADCPデータに対し、「VM-DAS」ソフトウエアを用いて、「1-2) アライメント誤差の推定」で推定したアライメント誤差を補正する。同時に、「1-1) GPS位置データの置き換えと船体動揺誤差補正」と同じ処理を行う。

  7. ピング毎の絶対流速値の算出と5分平均データセットの作成
  8. 公開データセットは、まず1ピング毎に各層の絶対流速値を算出し、不良データを除去した後、それを5分平均したものである。1ピング毎の相対流速値から流速計測時のGPS船速を減じて絶対流速を算出する。船速はピング発信開始時刻の位置データと次のピング発信開始時刻の位置データから求める。不良データの除去は、以下の順に処理を行ったものである。

    1) 極表層の異常流速(リンギングデータ)の除去
    パルス発信直後に受信される表層近傍のデータは、発信時のトランスデューサの共振等の影響により、実際より異常に大きな流速値として出力されることがある。この異常流速の発生はリンギング現象と呼ばれ、一般的に船舶の進行方向と同方位に流向が計測される。このため各ピングについて、ある層の絶対流速値が1.0m/sより大きく、その直下層の流速より2倍以上あり、かつその流向が船首方位の±45度以内にある場合、その層から海面までのデータをすべてリンギングデータとみなし除去する。

    2) ピングコリレーションおよびエコー強度によるデータ除去
    ピングコリレーションが120count未満(最大255count)、または、エコー強度が25count未満(最大255count)のデータは信頼性が低いため除去する。

    3) 海底付近のデータの除去
    海底付近のデータは、サイドローブ等の影響により異常流速が計測されることがある。 このため、水深の85%以深の計測データを除去する。ADCP計測水深がない場合には同時刻に計測したMBESの直下水深を使用する。水深が不明な場合には海底反射データが存在する期間の全層のデータにフラグ4(Questionable)を付加する。

    4) ランダムノイズの除去
    平均する5分間に含まれるデータの流速値に対して2σのフィルターを設けて異常流速値を除去する。

    5分間に計測された全データのうち、上記フィルターを通過して平均処理に使用されたデータの割合が10%未満となった場合、データの信頼性が低いと判定し、その5分平均データを無効(NaN)とする。加えて、エラー流速の絶対値が12cm/sec以上または、パーセントグッドが50%未満のデータにはフラグ4(Questionable)を付加する。

    公開データセットはODV(Ocean Data View)フォーマットとする。詳細はデータフォーマットを参照。