四次元変分法海洋環境再現データセット バージョン：04a
データセットの概要
このデータセットは四次元変分法海洋データ同化システムを用いて作成した1957年から2014年までの全球全層海洋環境再現データセットである。データ同化システムは、JAMSTEC－Kyoto Universityの共同研究（k7コンソーシアム）で研究開発されたものをベースとしている。本システムで用いた予報モデルは米Geophysical Fluid Dynamics Laboratory / National Oceanic and Atmospheric Administration で開発されたModular Ocean Model ver.3 (MOM3; Pacanowski and Griffies 1999)で、Noh scheme（混合層スキーム）やGent and McWilliams’s scheme （等密度面拡散スキーム）、quicker advection scheme （トレーサ移流スキーム）などのパラメタリゼーション・物理スキームを用いた四次元変分法に適する力学的に高いパフォーマンスを有するものである。本バージョンでは、新たに、潮汐エネルギーの分布に基づいた鉛直拡散スキーム(St. Laurent et al., 2002; Hibiya et al., 2006)を導入したほか、Davies (2013)にもとづき地熱の効果を導入した。水平解像度は緯度経度1 度で鉛直方向に46 層設けており、その間隔は海面付近での10m から海底付近での400m まで力学的見地に基づき設定されている。
物理パラメータ:
データ統合にはアジョイントデータ同化手法を応用している。用いた観測データはUK－MET officeにより編集されたEN4データセットの水温・塩分データ、Reynolds、OISST の海面水温(SST)データ、である。観測データの取り込みは、SSTについては約10日（旬）間隔で、海洋内部については一ヶ月間隔で行った。制御変数には、旬毎の海面フラックス（熱・淡水・運動量）と海洋全層の初期値に加え、本バージョンでは新たに鉛直拡散スキームの６つのパラメータも使用した。同化期間（同化ウィンドウ）は58年である。エネルギー散逸率の観測値を試験的に取り込んでいるが、これに関するコストの有意な低下は確認できていない。
生物化学パラメータ:
Green's 関数法を応用し最適なモデルパラメータを求めることで、入手可能な海洋観測データと窒素循環をベースとした海洋低次生態系モデル（NPZDCモデル）の統合を図っている。用いた観測データはWOA05の気候学的月平均硝酸塩データ、SeaWiFS の海色データ、およびWOA98の気候学的年平均chlorophyll-aデータをデトリタスに換算したものである。
データセット内容
| 変数, 略称 | ポテンシャル水温 [°C], | tmp |
|---|---|---|
| 塩分 [PSU], | sal | |
| 東西・南北流速 u[m/s] v[m/s], | vel | |
| 海面熱フラックス [cal/m2/s], | shf | |
| 海面淡水フラックス [m/s], | sff | |
| 風応力東西・南北成分 τx[N/m2] τy[N/m2], | tau | |
| ポテンシャル水温の鉛直拡散係数 [m2/s], | kzt | |
| 塩分の鉛直拡散係数 [m2/s], | kzs | |
| 硝酸態窒素 [μmol/L], | no3 | |
| 植物プランクトン [μmol/L], | pht | |
| デトリタス [μmol/L], | det | |
| 動物プランクトン [μmol/L], | zoo | |
| 溶存無機炭素 [μmol/kg], | dic | |
| 溶存酸素 [μmol/L], | oxy | |
| 溶存鉄 [nmol/L], | dfe | |
| 領域 | 全球 (75°S-80°N) | |
| 空間解像度 | 水平方向 1 度x 1 度、鉛直方向46 層 | |
| 期間 | 1957 年-2014 年 (Ver. 04a) | |
| ファイル形式 | 以下の月別のnetcdf ファイルである。 "k7oda_[XXX]_[YYYY][MM]00_[VVV].nc" "[XXX]" は変数の略称、"[YYYY]" は年、"[MM]" は月、"[VVV]" はバージョンを示す。 |
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データの引用
下記のデータおよび文献を引用してください。YYYY-MM-DDはアクセス日を示します。
Satoshi Osafune, Toshimasa Doi, Shuhei Masuda, Nozomi Sugiura, Tadashi Hemmi (2014) Estimated state of ocean for climate research (ESTOC). JAMSTEC. doi:10.17596/0000106 (accessed YYYY-MM-DD)
Osafune, S., S. Masuda, N. Sugiura, T. Doi (2015) Evaluation of the applicability of the Estimated State of the Global Ocean for Climate Research (ESTOC) data set, Geophys. Res. Lett., 42, 12, 4903–4911.
参考文献
Osafune, S., S. Masuda, N. Sugiura, T. Doi (2015) Evaluation of the applicability of the Estimated State of the Global Ocean for Climate Research (ESTOC) data set, Geophys. Res. Lett., 42, 12, 4903–4911.
Doi, T., S. Osafune, N. Sugiura, S. Kouketsu, A. Murata, S. Masuda, and T. Toyoda (2015) Multi-decadal change in the dissolved inorganic carbon in a long-term ocean state estimation, Journal of Advances in Modeling Earth Systems, 7, 4, 1885–1990.
