深海調査研究推進の基本的考え方
平成12年7月
改訂:平成14年7月
独立行政法人海洋研究開発機構
1.基本方針
独立行政法人海洋研究開発機構(以後「センター」という)は、海洋の総合的試験研究の一環として、深海域における地球科学的諸現象(テクトニクス、地震活動、地殻変動、生態系変動、物質循環)の総合的解明・予測及び技術開発を目指した調査研究(深海調査研究)を以下の方針で推進する。
1) |
センターは、上記深海調査研究を目的として潜水調査船「しんかい6500」、無人探査機「かいこう」、「ハイパードルフィン」、4000m級「ディープ・トウ」及び深海調査研究船「かいれい」(以後、潜水調査船等という。)を運用する。 |
2) |
潜水調査船等のシステム運用・船舶運航に当たっては、安全を最優先とする。 |
3) |
深海調査研究を効果的に推進するために研究課題及び乗船研究者を公募する。 |
4) |
緊急事態や政策的重要課題に対応するため、センター理事会が必要と判断した事項については、優先的にこれを実施することとする。 |
2.深海調査研究中期計画の策定体制
独立行政法人海洋研究開発機構の深海調査研究の基本となる中期計画は、有識者によって構成された「深海調査研究計画委員会」において策定される。また「深海調査研究推進委員会」は深海調査研究の総合的見地から必要に応じてセンター理事会及び「深海調査研究計画委員会」に助言・勧告を行う。「深海調査研究計画委員会」は検討にあたり、科学技術・学術審議会の答申を反映させるとともに、センターが開催するシンポジウムやワークショップを通じて、広く内外の科学的ニーズや動向を考慮することとする。
3.深海調査研究計画推進組織図
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深海調査研究計画委員会
独立行政法人海洋研究開発機構
深海調査研究中期計画 |
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4.深海調査研究各委員会の主な機能
1) |
深海調査研究推進委員会
センター理事会及び深海調査研究計画委員会に対し、深海調査研究の総合的見地からの助言・勧告
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2) |
深海調査研究計画委員会
(1) |
深海調査研究中期計画の策定 |
(2) |
深海調査研究中期計画に基づき公募された研究課題の科学的優先順位の決定(原則として、研究課題の科学的評価は当委員会で行うが、特に必要と認めたものについては外部の評価を求める。) |
(3) |
技術開発に係る研究課題の評価 |
(4) |
首席研究員等の指名 |
(5) |
実施後の評価 |
(6) |
調査研究の継続の可否の判定等
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3) |
実施計画調整部会
研究課題の科学的優先順位に基づき、安全性、技術的、運航上の問題等を勘案した実施計画の策定 |
5.深海調査研究推進の体制
1) |
背景
(1) |
科学領域の拡大に伴う社会の要請に幅広く応え得る、公正かつ公明な深海調査研究推進体制を構築することが必要である。
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(2) |
潜水調査船・無人探査機・深海調査研究船等多様化したシステムを有機的かつ安全で効率的に運用するための調査研究計画策定体制が必要である。
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(3) |
平成13年省庁統合に対応し委員会組織及びその機能の見直しを行い、21世紀の新たな深海調査研究環境に応え得る調査研究推進体制とする。
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2) |
研究課題の公募
潜航調査毎の研究課題を公募する方法に加えて、一つの科学目標を達成するための研究プロジェクトとして企画する総合的・複合的研究課題を導入し、個別の研究課題と併せ公募を行う。
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3) |
公募における情報(公募に際しては以下の条件を明記する。)
(1) |
調査研究において利用可能な潜水調査船等をはじめとするセンター所有の機器の内容(申請者から機器に関する要望を受ける部分の欄を申請書に設ける) |
(2) |
調査航海等における制約条件(関連する法令・センターの安全規則等) |
(3) |
研究課題審査の手順と申請者の対応 |
(4) |
受理後から調査航海終了までの業務手順
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4) |
研究課題の扱い
全ての研究課題は採択まで非公開とし、採択後初めて公開される。
(委員会委員の氏名は公開を前提とする。)
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5) |
総合的・複合的研究の継続
総合的・複合的研究は独立行政法人海洋研究開発機構の潜水調査船等の運航計画に基づき、5年以下の間調査研究を優先的に継続することができる。ただし、毎年深海調査研究計画委員会の実績評価を受ける事を必要とする。
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6) |
研究計画の検討評価体制
深海調査研究計画委員会において、研究課題の評価及び実施後の成果の評価を一元的に行う。 |
6.深海調査研究計画委員会
1) |
委員会の規模と構成
各専門分野(固体地球系・生態系・物質循環・長期観測・技術開発)を代表する委員9名程度、それに委員長1名。委員長についは深海調査研究推進委員会がこれを推薦し、理事長がこれを任命する。専門分野別委員の人選は委員長がこれを指名し、理事長がこれを任命する。また、委員長が必要と認めた場合にはオブザーバーを参加させることができる。委員名はセンターweb.等を通して公表される。任期(3年:必要に応じ再任を認める) |
2) |
委員会の役割
(1) |
深海調査研究中期計画の策定
深海調査研究中期計画は、センターの深海調査研究の基本となるものであり、5年から10年を見越した科学計画を定める。
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(2) |
研究課題の検討と評価
a. |
従来型研究課題(個別研究課題)
科学計画の現実度、完成度、科学的な魅力などについて検討し、採択・不採択の判断を下す。また、採択されたものについては委員によって優先順位を決める。 |
b. |
総合的・複合的研究
科学計画の現実度、完成度、科学的な魅力などについて検討し、採択・不採択の判断を下す。また、採択されたものについては委員によって優先順位を決める。必要に応じ適当な助言を与え、申請者へ差し返すことができる。 |
c. |
技術開発に係る研究課題
その課題の科学的展望について評価する。 |
d. |
不採択の場合には、その理由を付記し申請者に通知する。
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(3) |
調査航海の実施結果に対する評価
「しんかいシンポジウム」終了直後に評価のための委員会を開催し、立案計画に対する実施結果を評価する。評価の結果、実行された研究計画が適切であると判断できる場合には次年度に継続、不適切とされたものについては、次年度以降の研究継続は行わないものとし、実施計画調整部会報告にすると共に、担当首席及び次席研究員に評価結果を通知する。
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(4) |
総合的研究航海の首席/次席研究員、及び従来型(個別研究課題による)研究航海の乗船研究責任者(首席研究員)の指名
a. |
個別研究課題の研究
夫々のLeg及び行動に対して責任連絡員としての乗船研究責任者(首席研究員)を指名する。
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b. |
総合的・複合的研究
研究課題の代表提案者を原則首席研究員とするが、同時に研究課題の遂行にとって最も適任と思われる次席研究員を指名出来る。
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7.実施計画調整部会
1) |
部会の規模と構成
本部会の部会長は深海調査研究推進委員会が推薦する。他の部員は部会長が指名し、基本的には合計8名で構成される。但し深海調査研究計画委員会委員の中3名が兼任する。部会長及び部員は理事長が任命する。部会長が必要と認めた場合には、オブザーバーを参加させることができる。部員名はセンターweb.等を通して公表される。任期(3年:必要に応じ再任を認める) |
2) |
実施計画調整部会の役割
深海調査研究計画委員会の検討結果(研究課題評価、実績評価、中期計画等)を受け、優先順位の上位のものから適宜向こう3年間程度に亘り乗船研究者と調査研究の運航実施時期等を当嵌め年次計画を策定する。但し運航実施上適正さを欠くと判断された研究課題については、再度これを深海調査研究計画委員会へ差し戻すことができる。また、深海調査研究計画委員会において評価採択された各総合的・複合的研究について、向こう3年間分までの運航計画の策定を行う。 |
3) |
策定された運航計画について実施の可能性を下記項目について確認する。
(1) |
安全性 |
(2) |
時期的適応性(気象・海象・予算等) |
(3) |
諸手続き等の確認(特に外国のEEZ水域、領海内水域調査等)
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4) |
計画実施の調整
(1) |
上記検討を通過した各総合的・複合的課題について、首席研究員に対して参加研究者を含む調査研究実施計画(案)の提出を要求し、運航実施上の必要に応じて調整を行う。 |
(2) |
実施計画(案)準備の進捗状況を確認、実行不可と判断されたものは、深海調査研究計画委員会と協議の上、その採否を決定する。
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5) |
技術的問題及び調査機器に関する評価検討
提案された研究課題についてその技術的妥当性を評価し、現実性の有無を判断する。研究課題にセンターの施設装備についての要望があった場合にはその妥当性と実現の可能性を評価し、センター研究業務部へ勧告を行う。なお、本項目については必要に応じてセンター内外の有識者のを助言を得ることができる。 |
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