平成15年度海洋地球研究船「みらい」研究航海概要
1.航海番号 MR03-K04
2.主要研究課題
A:海洋大循環による熱・物質輸送とその変動に係る観測研究(レグ1、レグ2、レグ4、レグ5)
B:海洋の化学環境変化の把握に係る観測研究(レグ1、レグ2、レグ4、レグ5、レグ6)
C:海洋環境変遷の解明に関する研究(レグ3、レグ6)
3.観測研究の目的
A.
南極周極海域および南大洋の中深層では、北大西洋深層水、紅海流出水、北太平洋深層水が同海域に流れ込み、互いに大きな変質を受ける一方、表層では南極底層水、南極中層水、亜南極モード水が形成されている(南極系オーバーターン)。これらの海水は南極周極海域を焦点として全世界の大洋に補給され、海洋の鉛直的な熱・物質分布構造を決定している。したがって、地球温暖化を含む地球気候変動の実態解明、さらにはその予測研究を推進する上で、南半球中・高緯度海域を中心とする海洋観測の充実は重要である。本観測研究では、南極周極海域を取り囲むように海盆を横断する観測(WHP測線の再観測)を半年間で行い、南極系オーバーターンによる熱・物質輸送量の把握する一方、過去のWOCE、SAVEデータとの比較から、その変化の機構解明を目的とする。
B.
地球温暖化を含む地球気候変動の実態解明、さらにはその予測研究を推進する上で、温暖化気体や人為起源気体の大気海洋間移動量の時間変化、および、地球表層で生じている生物・化学環境の変化を定量的に把握する必要がある。本観測研究では、南極周極海域を取り囲むように海盆を横断する観測(WHP測線の再観測)を行い、南極系オーバーターンの化学環境変化の解明を目的とする。また、海洋表層での生物活動が活発な南大洋において集中観測を行い、地球環境に大きな影響を及ぼす海洋表層における生物起源気体の動態の解明を目的とする。
C.
将来の気候予測のために、過去に生じた大規模な気候変動を復元し、その要因やプロセスを探ることが重要である。本観測研究では、「深層水循環」、「炭素循環」、「南北両半球の位相関係」の3つをキーワードに採泥観測を行い、最終氷期以降の南半球全域の環境変遷像を高い時間分解能で明らかにする。また、過去を復元する代替指標のキャリブレーションのために、表層堆積物を採取する。
4.観測の概要
レグ1、レグ2、レグ4、レグ5:
CTD/O2/LADCPによる海面から海底までの水温・塩分・溶存酸素・流速、蛍光光度、濁度の測定
RMS採水による塩分、溶存酸素、栄養塩、フロン、アルカリ度、溶存無機炭素、溶存有機炭素、pH、一酸化二窒素の現場分析
RMS採水による炭素同位体比、ヘリウム同位体比分析サンプル収集 表層大量採水による基礎生産量測定
水中散乱、透過光測定
航路上での大気・海面二酸化炭素分圧、海面水温、塩分、栄養塩、可能ならば全炭酸、表層流速、水深、海上気象の連続観測
マルチプルコアサンプル(レグ2:3点、レグ4については可能ならば2点)
レグ3:
ピストンコア・マルチプルコアによる採泥観測
ブラジル沿岸域航路上での大気・海面二酸化炭素分圧、海面水温、塩分、栄養塩、可能ならば全炭酸、表層流速、水深、海上気象の連続観測およびXCTDあるいはXBTによる高密度観測
レグ6:
CTD/O2による海面から海底までの水温・塩分・溶存酸素の測定
RMS採水による塩分、溶存酸素、栄養塩、フロン、アルカリ度、溶存無機炭素、溶存有機炭素、pH等の現場分析
RMS採水による炭素同位体比分析サンプル収集
RMS採水による海洋表層のDMS濃度、植物色素濃度、基礎生産力の測定
航路上海面での二酸化炭素分圧、全炭酸、水温、塩分、栄養塩等の連続観測
航路上での表層流速、水深、海上気象等の連続観測
ピストンコア・マルチプルコアによる採泥観測
5.主たる調査海域
南半球中緯度海域、チリ西方海域、および、インド洋南方南大洋海域
レグ1:東経150度から西経150度、南緯30度から南緯33度(WHP/P6を予定)
レグ2:西経150度から西経70度、南緯32度から南緯33度(WHP/P6を予定)
レグ3:西経80度から西経70度、南緯35度から南緯55度、南緯33度からサントス沖までのブラジル経済水域
(採泥予定点1:南緯38度 西経75度、採泥予定点2:南緯45度30分 西経75度30分、採泥予定点3:南緯55度 西経75度)
レグ4:西経50度から東経20度、南緯27度から南緯31度(WHP/A10を予定)
レグ5:東経30度から東経115度、南緯19度から南緯25度(WHP/I4, I3を予定)
レグ6:東経70度から東経110度、南緯40度から南緯60度
(採泥予定点1:南緯42度 東経90度、採泥予定点2、3:南緯45度から南緯60度 東経70度から90度の範囲)予定観測点を付録に記載
CTD採水予定観測点及びレグ6予定観測位置については 付録に記載。
6.寄港地予定
ブリスベン → (レグ1) → タヒチ → (レグ2) → バルパライソ → (レグ3) → サンパウロ → (レグ4) → ケープタウン → (レグ5) → フリーマントル → (レグ6) → フリーマントル
7.日 程
平成15年8月13日〜平成16年2月10日(182日間)
レグ1:平成15年 8月13日−9月11日
レグ2:平成15年 9月14日−10月16日
レグ3:平成15年10月18日−11月 1 日
レグ4:平成15年11月 5日−12月 2 日
レグ5:平成15年12月 6日−平成16年1月15日
レグ6:平成16年1月18日−2月10日
8.調査主任予定
レグ1:深澤理郎
レグ2:渡邉修一
レグ3:原田尚美
レグ4:吉川泰司
レグ5:深澤理郎
レグ6:渡邉修一
9.本航海計画の問合せ先
横須賀市夏島町2−15
独立行政法人海洋研究開発機構 海洋観測研究部
課題A:深澤理郎
E-mail:fksw@jamstec.go.jp
TEL:0468-67-9470 FAX:0468-67-9455
課題B:渡邉修一
E-mail:swata@jamstec.go.jp
TEL:0468-67-9500 FAX:0468-67-9455
課題C:原田尚美(むつ研究所)
E-mail:haradan@jamstec.go.jp
TEL:0468-67-9504 FAX:0468-67-9455
10.備考
本航海のうち、Leg1、2、4、5では、WHP観測が実施される。それゆえにJAMSTEC研究員、MWJおよびGODI技術者が多数乗船する。また、EEZ問題に関係して、他国のオブザーバおよび研究者が乗船する可能性が極めて高いことから、Hydrographyおよび上述のunderway観測項目以外に、シップタイムおよび人的資源を必要とする観測研究を実施することは、極めて困難である。また、Hydrographyにかかわる共同利用参加については、乗船、非乗船にかかわらず、上述の観測項目いずれかのPIとしての参加をお願いしたい。なお、全ての観測項目について、全航海終了後2年を最長限度として品質管理を終え、WHPOおよび、JAMSTEC、JODCを通じて公開し、その自由な利用を目指す。本航海は、POGO(Partnership Of Global ocean Observation)−Ⅱで採択されたSao Paulo宣言の要請に応えるという国際的性格を持つ。