平成21年度海洋地球研究船「みらい」主要課題概要


1.航海番号
MR09-03

2.主要課題名
北極海における総合観測航海

3.観測研究の目的
   北極海では現在を含めたこの10〜20年の間に、北極海を広く覆っていた多年氷の大幅な減少、大気循環場の変化、及びこれらに伴う北極海海洋循環場や水塊特性の変化といった顕著な気候変化が起きることが予測されている。海氷の減少は生態系にも影響を与えると考えられ、結果として北極海の物質循環にも影響を及ぼすことが推測される。本課題(北極海における総合観測航海)においては、
a. 温暖化に伴う北極海での大気・海洋系、生態系の変化の実態把握
b. 北極海の変化を起こしている各プロセスの解明
c. 北極海で起きる変化の影響評価に繋がる観測データの取得と公開
を目的として、北極海海盆横断観測と、複数地点での定点観測を行う。

4.観測の概要
   本課題の主要研究テーマは北極海における海洋物理・気象・生物地球化学に関する現象であり、海洋循環・大気循環・生態系の変化・プロセスの解明と相互作用の理解を念頭に置いた総合観測研究を行う。またこの総合観測の結果を元に再解析・データ同化やモデル研究などとの連携し、北極域の急激な変化に伴う影響評価を行う。上記を達成するために、本課題は2つの主要観測から構成される。
・北極海の主要海盆を横切る横断観測
・特徴的な複数の地点における定点観測
主たる観測項目は、
・海洋観測:CTD/LADCP/採水観測、乱流直接観測、表層水連続観測など
・気象観測:ラジオゾンデ観測、ドップラーレーダー観測、総合海上気象自動観測など
とし、それぞれ横断・定点観測において、焦点を当てた現象を解明できる時空間解像度で観測を行う。

5.調査海域
北極海(カナダ海盆、マカロフ海盆、アムンセン海盆、ナンセン海盆)。特に夏季に海氷がなくなるカナダ海盆南部からシベリア側の北極海を対象とし、下図のような観測海域(案)を設定する。


調査海域予定図:International Bathymetric Chart of the Arctic Ocean (IBCAO)を元に作成


6.日 程
平成21年8月28日(関根浜) 〜 10月25日(関根浜) (59日間)
うち北極海航海は、平成21年9月7日(Dutch Harbor) 〜 10月15日(Dutch Harbor) (39日間)

7.寄港地
出港地:関根浜、寄港地:Dutch Harbor
 

8.主要課題提案者
独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境観測研究センター
地球温暖化情報観測研究プログラム 北極海気候システムグループ サブリーダー 菊地 隆

9.本航海計画の問い合わせ
〒237-0061 神奈川県横須賀市夏島町2-15
独立行政法人海洋研究開発機構 地球環境観測研究センター
地球温暖化情報観測研究プログラム 北極海気候システムグループ サブリーダー 菊地 隆
E-mail:
TEL:046-867-9486, FAX:046-867-9455

10.備考
   ・北極海における観測作業は、海氷・気象・海象状況により観測計画を変更せざるを得ない事態が起こり得る。その場合は、観測可能な海域において集中観測を行うことで対応する。
・調査海域予定図が示す通り、本課題における観測計画はロシア及びアメリカの排他的経済水域(EEZ)における海洋・気象観測を含む。特にロシアに関しては、国際北極研究センター(IARC)との国際共同研究においてEEZに関する調整を行うことを協議している。調整不調の場合は、該当する海域(ナンセン海盆)での観測は中止する。

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