JAMSTEC
平 成 10 年 1 月: 海洋科学技術センタ-
高緯度海域である北西部北太平洋は海水温度が低く、荒天時が多いため、特に冬季において二酸化炭素を始めとする物質が大気-海洋間で活発に交換されていると考えられ、海洋における炭素循環に関して重要な海域の一つである。さらに栄養塩の蓄積された深層水の湧昇に関連し、植物プランクトンの基礎生産力が一年中高く、またケイ藻種が優先種であるので、表層で生物により固定された二酸化炭素は多くの物質とともに、中・深層へ活発に効率よく輸送されていると考えられる。
また、北太平洋全域には低塩分で特徴づけられる北太平洋中層水が存在しており、その移動・混合過程は北太平洋の物質循環に重要な役割を果たしていると考えられる。
北西部北太平洋及びその隣接海域において時空間的に連続して生物地球化学パラメ-タ-の観測を行い、粒状物の生成・分解過程、粒状物質/溶存物質/ガス成分の輸送過程、及びその堆積過程を把握し、高緯度海域の地球環境変動に関わる役割を解明する。
北西部太平洋海域
平成10年11月1日(日)〜12月15日(火) (45日間)
海洋科学技術センター海洋観測研究部
日下部 正志
赤道太平洋域の東側では、卓越した貿易風により深層から海水が湧昇し、これにともなって栄養塩類が有光層内に運ばれるため高生物生産となっていることが知られている。この西側暖水域の低生産、東側昇湧域の高生産の構造は、数年規模の気候変動として有名なENSO(El-Nino-Southern Oscillation:エルニ-ニョ・南方振動)に呼応して大きく変化するが、現在の所、生物学的によく理解されているとは言えない。
基礎生産力、新生産力、植物色素濃度及び、基礎生産に影響を与える因子である栄養塩、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、海中光を計測し、この海域の特徴を詳細に把握するとともに、基礎生産機構の解明及びその変動を解明する。
赤道海域
平成10年12月23日(水)〜平成11年1月31日(日) (40日間)
海洋科学技術センター海洋観測研究部
河野 健
南アジアから北東アジアに及ぶ地域において社会的、経済的影響の大きなモンス-ン変動やエルニ-ニョの解明を目的とし西部熱帯太平洋の暖水プ-ル域(将来にはインド洋も含む)における大気と海洋の変動の観測研究を行う。この観測研究では、トライトンブイの展開が大きなウエイトを占める。
トライトンブイとTAOブイのデ-タを中心とした混合層の熱・水収支、運動量収支の観測を実施する。混合層のメカニズムに対する塩分効果、赤道波動による収束・発散の諸問題を解明する。また南半球から暖水プ-ル域へ、さらに暖水プ-ル域からインドネシア多島海を通じてインド洋への水・熱輸送の変動について調べる。
西太平洋赤道海域
平成11年2月12日(金)〜3月26日(金) (43日間)
海洋科学技術センター研究業務部
黒田 芳史