JAMSTEC

海洋地球研究船「みらい」利用計画
平成9年9月:
「みらい」運用体制検討委員会
- はじめに
海洋地球研究船「みらい」(以下「みらい」)利用計画か、「みらい」の利用の在り方の基本方針について定めるものである。
海洋や地球規模の諸現象の観測研究には長期的な取り組みが必要であり、ここに定める利用計画は、10年間程度機能することが期待される。
しかしその一方で、社会的なニーズに的確に応えることも重要であることから、必要が生じた場合には適宜見直しを行うこととする。
- 「みらい」の特徴と役割
原子力船「むつ」は、その役割を終え、原子炉は取り除かれ、代わりに最先端の観測機器を多数搭載した海洋地球研究船「みらい」として生まれ変わった(別紙参照)
「みらい「は、すぐれた耐氷性、航行性を有し、広域かつ長期間にわたる観測研究を行うことが可能な世界最大級の海洋地球研究船であり、地球温暖化等の地球規模の環境変動の解明・予測に大きく貢献するものである。
「みらい」は、その特徴を生かし、以下の基本的な役割を果たすことが期待される。
(1) 海洋地球研究の最先端国際洋上基地
「みらい」は、その大型の船体、流氷域も航行が可能な耐氷性、荒天下の海域でも観測が可能な航行性・作業性を有するとともに、各種最先端の観測機器を多数搭載している。
これらを活用し、「みらい」は、地球温暖化など地球環境変動の解明と予測のための研究や、観測のための技術開発等を、国境や学問領域を越えて総合的に実施するための、海洋地球研究の最先端国際洋上基地としての役割を果たすことが期待される。
地球環境問題等に関連する地球規模の海洋調査研究としては、海洋開発審議会第4号答申「我が国の海洋調査研究の推進方策について」(平成5年12月)において、4つの重点基盤研究テーマ(熱循環の解明、物質循環の解明、海洋生態系の解明、海洋底ダイナミクスの解明)が示されており、「みらい」がこれらのテーマを重点として地球環境変動の解明に活用されることが期待される。
(2) 多様な海洋地球データの発信基地
「みらい」は多数の観測機器を搭載するとともに、観測・データ解析を行って、乗船する研究者の観測研究活動を支援する研究支援体制を有している点が従来の海洋観測船にはないすぐれた特徴であり、船上において、効率的・効果的な研究活動を実施することが可能となっている。また、この体制によって、従来と比べ観測データを速やかに公開することが可能となっている。
これらの機器、体制を活用し、様々な海域における海洋の現象や地球環境に係る高精度のデータを発信し、研究あるいはその他の目的に幅広く利用の促進を図るなど、海洋・地球環境データの国際的な発信基地としての役割を果たすことが期待される。
(3) 動く海洋地球研究船
「みらい」から得られる研究成果を、国内はもとより、世界中の青少年や一般の人々に周知するとともに、「みらい」が寄港する機会を活用して、海洋や海洋が地球環境問題に果たす役割についての理解を深めるための、動く海洋地球科学館としての機能を果たすことが期待される。
- 「みらい」の利用のための基本的考え方
上記の基本的役割を果たすため、「みらい」は以下の考え方に従って利用されることが重要である。
(1) 開かれた研究体制
「みらい」は様々な機能を有しており、それらを効果的・効率的に利用して最大の研究成果を導き出すことが必要である。
そのため、科学的展望のもとに策定される計画に基づき、「みらい」を利用して実施する研究課題及び乗船研究者を国の内外から募集し、科学的支店から優れた研究課題を厳正なな審査により採択する。
(2) 観測データ/サンプルの積極的な取得・公開
「みらい」は様々な海域を航行する際、積極的にデータを取得するものとする。ま
た、デ-タ取得の要望についても対応することとする。
「みらい」は、乗船研究者のみならず広く活用されるため、取得された観測デ-タ/
サンプルは、インタ-ネットなどの最先端の情報技術や、既存のデ-タ収集・交換機
能を活用して、可能な限り速やかに公開する。
(3) 国際的な研究への貢献
海洋観測研究に関連して、地球規模の海洋現象や地球環境変動を解明し予測すること
を目的に、世界海洋観測システム(GOOS:Global Ocean Obse
rving System),気候変動及びその予測可能性に関する研究(CLIV
AR:Climate Variability and Predictabil
ity)等、現在様々な国際的活動が実施されている。「みらい」をこれらの活動へ
の積極的な貢献を目指して利用する。
(4) 「みらい」の成果の公開と海洋への理解の促進
「みらい」は、その成果が国民に還元されることが肝要であり、積極的に成果の公表
に努める。また、青少年をはじめとする国民に対し海洋に対する理解の増進を図るた
めに「みらい」を活用する。
(5) 利用の透明性の確保と厳正な評価の実施
「みらい」の利用に係わる過程の透明性を確保するとともに、利用して得られた研
究成果ならびに利用の状況について厳正な評価を実施して「みらい」のより適正な
利用を図ることとする。
- 「みらい」の利用にあたって
「みらい」の利用にあたっては、上記の考え方に基づいて、以下の点を具体化するこ
とが必要である。
(1) 計画の策定
「みらい」の効率的・効果的な利用のため、海洋科学技術センターは、関係分野の研
究者をはじめとする外部の有職者より構成される委員会を設けて以下の計画を検討し
、その意見を十分に尊重して策定する。
- 長期観測研究計画
向こう10年間に「みらい」を運航して実施すべき観測研究の課題について定
めるものであり、原則として5年毎に見直す。
- 中期運航計画
長期観測研究計画に基づき、向こう3年間の「みらい」の運航計画(主たる研
究課題、海域、航海期間、定常観測項目等)を定めるものであり、毎年見直す。
(2) 公募の実施及び選定
海洋科学技術センターは、策定された中期運航計画に基づいて、「みらい」を利用し
て実施する研究課題を公募する。研究課題の選定については(1)において設置され
る委員会で検討し、海洋科学技術センタ-が、その意見を十分に尊重して決定する。
(3) 評価の実施
海洋科学技術センタ-は外部の有職者によって構成される評価体制を設け、「みらい
」を利用して実施した研究及び「みらい」運航全体について厳正な評価を行う。
評価にあたっては、「国の研究開発全般に共通する評価の実施方法の在り方について
の大綱的指針」(内閣総理大臣、平成9年8月7日)に従うものとする。
(別紙)
「みらい」の機能
1)大型の船体(基本仕様)
- 総トン数:約8,600トン
- 主要寸法(長さ×幅×深さ×喫水)
②:約130×19.0×13.2/10.5×6.9
- 航行区域:遠洋区域(国際航海)
- 船級:日本海事協会
- 航海速力/航続距離:16ノット/12,000 海里
- 連続航海日数:60日
- 研究員/研究支援員/乗組員:28人/18人/34人 (合計80人)
- 推進システム:ディーゼル電気複合推進、2軸CPP
:4サイクルディーゼル主機関 2500PS×4台
2)荒天海域での観測
- 船体動揺軽減装置、高度の操船機能 (ジョイスティクコントロール)等により、
北 部太平洋などの荒天海域(シーステート5まで:「風浪」の平均波高2.5m〜4m
)における採水・CTD 観測等が可能。
- 観測ワイヤーに及ぼす船の上下動を約1/3に減ずるアクティブ型スウェルコン
ペンセータを装備。
3)耐氷機能
夏季の北極海やオホーツク海などの氷縁域・流氷域など、通常の海域調査船などでは
できなかった海域の観測が可能 (夏季極海域航行可-NK Ice Class 1A )
4)多様な海洋観測機器の搭載・運用
- ADCP (音響流向流速計)、CTD(塩分濃度計、海水温度計、深度計)、採水器、
表層海水連続観測装置、波高計、衛星データ受信システムなどの海洋観 測機器。
- ドップラーレーダー、気象観測装置、大気ガス観測装置などの海上気象観測機器。
- マルチナロービーム音響測深機、サイドスキャンソーナー、サブボトムプロファ
イラー、船上重力計、3成分磁力計、曳航式プロトン磁力計、ピス
トンコアラー等の海底地形・地質・地球物理観測機器。
- 船上におけるデータの解析及びサンプルの分析・処理を行うための各種機器の整備。
5)船内研究室
- 気象観測関係研究室:
- ドップラーレーダー室、気象観測室、大気ガス観測室
- 海洋観測関係研究室:
- 生物・化学分析室、生物・化学試料処理室、低温実験室、
表層海水分析室
- 地球物理関係研究室:
- ドライラボ、セミドライラボ、ウェットラボ、堆積物処理室、
堆積物試料保管室、X線室、重力計室
- その他:
- 調査指揮室、ネットワーク管理室、データ処理室、電子機器工作室
6)船内データ管理システム
LAN, CATV, 観測データをリアルタイムでデータベース化。
7)衛星データ受信設備
ひまわり、METEOSAT, GOES, NOAA, SEASTAR 等の衛星データ受信設備装備。
8)船内居住設備
- 研究者及び観測技術員居室:
- 1人部屋 12室
- 2人部屋 13室
- 4人部屋 2室
- 計 27室
9)研究支援体制
各種の海洋観測機器、海底地質・地球物理観測機器、海上気象観測機器、データ/サ
ンプル処理・分析・管理や大型海洋観測ブイ等の運用・維持・管理を行う専任の観測
技術者の乗船。
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