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【Topics】深海の「紫色の靴下」状の生き物についての研究「New deep-sea species of Xenoturbella and the position of Xenacoelomorpha」がNature誌で報告されています。

May 23, 2016

2月頃ネット上で一部話題になりましたが、深海の「珍渦虫」について研究報告がなされました。
Rouse, G. W., Wilson, N. G., Carvajal, J. I., & Vrijenhoek, R. C. (2016) . New deep-sea species of and the position of Xenacoelomorpha. Nature, 530 (7588) , 94-97.
https://www.nature.com/articles/nature16545

これまで「珍渦虫」はスウェーデンとメキシコ湾から知られていますが (OBISで確認) 、今回新たに20cm級の大型の種類を含む4新種が報告されています。以前の研究では、「珍渦虫」の体内から見つかった組織をもとに分析し、貝類に近い分類群であるとするなどいくつかの説が提唱されていましたが、系統学的な位置づけは不明なままでした。しかし、今回の解析では、体内から見つかった組織は餌生物の組織で有り、「珍渦虫」は系統学的にはNephrozoaもしくは左右相称動物の姉妹群にあたると述べています。

学術的な話題はさておき、著者らは論文の謝辞のなかで「珍渦虫」を「purple stock」と称しています。言われてみると確かに、論文中に掲載されている写真が海底に脱ぎ捨てられた紫色の靴下のように見えてきます。論文を読んだJ-OBISスタッフの一人が、深海の「紫色の靴下」について思い当たる節があると言い出しました (J-EDIによる映像) 。そのスタッフの記憶にある公開画像・映像を見てみると、インド洋の熱水噴出口近くからの映像に「紫色の靴下」状の生き物が映っています。一方で、靴下と称するには若干厚みが足りないような気もします。はたして噂の「珍渦虫」なのか、「深海にいる紫色の靴下」状のヒラムシなのか深海生物の専門家の意見が欲しいところです。

(後日談) 紛うことなきヒラムシであるとの情報を頂きました。以下の文献に写真付きで大きく掲載されています。
Van Dover, C. L., et al. Biogeography and ecological setting of Indian Ocean hydrothermal vents. Science 294.5543 (2001) : 818-823.
https://science.sciencemag.org/content/sci/294/5543/818.full.pdf

「"purple stock"の系統学的な位置」を図示すると...

J-OBISスタッフの記憶にある「紫色の靴下」
(珍渦虫かと思いきや...その後、ヒラムシと判明)

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