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日本語で学ぶOBISの使い方

T. Hosono
2022-09-21

基本的な調べ方(OBISトップページの使い方)

海洋生物の分布を調べる

  • 学名で検索する:Caretta caretta
  • 和名で検索する:アカウミガメ
  • 関連するデータセットを検索する:Loggerhead

OBISを活用する最たる目的は、任意の海洋生物の情報を収集することであろう。OBISのトップページからは任意の海洋生物の情報を簡単に取得することができる。今回はアカウミガメCaretta carettaアカウミガメloggerhead sea turtle)を例に紹介する。検索窓に学名を途中まで入力すると、候補が一覧で表示され、それらを選択すると、Caretta carettaに属する情報が表示される。画面領域が広い場合、最上部は分類学的情報が表示される。下部左側はOBISに格納されているアカウミガメに関するデータの概要(データ数、観察された期間、格納されたデータの精度に関する情報)が表示される。下部右側は、OBISに格納されたデータを可視化したものであり、特にグリッド化された地図表示においてアカウミガメが観察され、記録された場所を知ることができる。研究利用のユーザーはさらに踏み込んで、グリッド化されて表示されたデータそのものにアクセスしたいと思うかもしれない。その場合、分類学情報パネルの右下にある「to mapper」ボタンもしくは地図右上の「Open in mapper」アイコンを押下するとOBISの提供するmapperに遷移しデータを取得することができる。詳しくはOBISのmapperを使うを参照。

和名で検索したい場合は検索窓左側のプルダウンメニューを「Common names」に変更し、アカウミガメと入力する。結果の見方や、データの取得方法は学名の場合と全く同じである。

アカウミガメの生物観察記録に限定せず、アカウミガメに関するデータセット(調査や研究単位でまとめられたデータの集まり)を取得したい場合はデータセットの検索を行う。検索窓左側のプルダウンメニューを「Datasets」に変更し、検索窓下部に現れる「For advanced dataset search continue here.」を押下する。その後、Keywords検索窓にLoggerheadなどの関連する語彙を英語で入力すると、関連するデータセットが一覧で表示される。データセットのデータを利用したい場合はデータセットから取得するを参照のこと。

特定の海域の生物を調べる

  • 排他的経済水域(EEZ)でしらべる:Japan
  • 海洋世界自然遺産サイトで調べる:Ogasawara Islands
  • 国家管轄権外区域(ABNJ)で調べる
  • Large marine ecosystems(LME)で調べる

OBISを活用する目的の1つとして、興味のある地域(海域)の情報を取得する事が考えられる。例えば、特定の海域における保全政策立案のための基礎データ取得や、調査計画策定のための事前情報整備などがありえる。OBISトップページの検索窓左側プルダウンの「Areas: EEZ」を選択すると、国毎のEEZ内の生物観察記録を取得することができる。検索窓に「Japan」と入力したときの結果からは、OBISに報告されている日本の排他的経済水域からの生物出現記録の総数、種数、分類群数(○○属や○○科として報告されている出現記録も多いため)などを知ることができる。

他にも「Areas: ABNJ」ではいわゆる公海海域を指定することができ、「Areas: EBSA」では生態学的・生物学的に重要な海域を、「Areas: MWHS」では海洋世界自然遺産サイトを、「Areas: LME」ではLarge marine ecosystemsをそれぞれ指定することができる。

データを取得する

データセットから取得する

  • OBISのデータとIPTのデータ
  • DWC-Aファイルの取得

OBISから取得できるデータはOBIS自身が統合したデータのほか、各ノードが提供する生に近いデータもある。OBISが統合したデータは、後述のmapperやRを利用して取得する。ここでは、特定のデータセットを選択した後にデータを取得する方法について説明する。例として「Organisms observed during the Shipboard Oceanographic Laboratory 3, Department of Marine Biology, Tokai University」データセットをもちいる。ページ上部にデータセットの「Abstract」にはデータセットの概要、「Citation」には引用時の表記、「Contacts」には連絡先が表示されている。とくに「Rights」はデータの利用条件を示す重要な項目である。

「to mapper」ボタンを押下するとOBISのmapperに移行する(次節で説明)。「source DwC-A」ボタンを押下すると、各ノードIPT上のデータを直接ダウンロードできる。IPT上のデータはOBISが統合する前段階のモノであり、DwC-A形式(アーカイブ形式)である(DwC-Aについてはこちら)。あるいは、ページ上部にある「URL」項目のリンクを押下することにより各ノードのIPTにアクセスでき、データセットの詳細なメタデータ(データセットの概要)を調べることが可能である。また、遷移先のIPT画面の「Downloads」項目からOBISのページからダウンロードできるDwC-Aファイルを取得できる。DwC-Aのファイルにアクセスする最大の意義は、それらのデータがOBISへの統合化プロセスを経ていない点にある。統合化はデータの横断的検索や取扱の一元化など大きなメリットをもたらす。一方で、それぞれのデータが取得された条件や研究プロセスが利用目的に合致しているかを精査したい場合や、OBISのデータ統合化プロセスによって切り落とされたデータのレスキュー(つまりDwC-Aの方がデータ数が多い事がある)を実施したい場合は、生データに近いDwC-Aファイルへアクセスすることには大きな意味がある。

mapperを使う

  • 学名・地理・時間範囲・水深範囲・ポリゴンによる任意の地域選択・拡張項目・オプションによるデータ絞り込み
  • 表示の変更(グリッド表示からポイント表示への変更・背景地図の変更)
  • データのダウンロード

OBISのmapperによる典型的な利用方法は、興味のある学名・期間・地域・水深でデータを絞り込んだ上で、データを可視化し、データを取得することであろう。mapperの「+」タブから絞り込みが可能である。「Scientific name」には学名を頭から数文字程度入力すると候補が表示される。この候補の中から学名を選択すると、その学名のデータが選択される。この他、「Time range」や「Depth range」タブからは海洋生物が観測された期間や水深範囲をスライドバーで絞り込むことができる。「Extensions」タブにある「MeasurmentOrFact」は生物観察記録に関連づけられた水温、塩分、生物測定データなどがある場合に取得することができる。「DNADerivedData」は環境DNAなどのDNA関連データがある場合に用いる。「Options」の「only Red List species」をチェックすると、例えば、特定の海域でデータを絞り込んだ状態で、IUCN絶滅危惧種のみのデータに絞り込むことができる。地図画面右上のポリゴンを押下し、地図上でポリゴンを描画することで、任意の形状の地域のデータを絞り込むことができる。

mapperは、デフォルトではグリッド表示になっており、色の濃淡がグリッド内のデータ数を表している。より見やすくするため、左側のパネルの「Layers」タブに移行し、「メニュー」ボタンから「Toggle points」を選択すると、データが点として表記される。さらに、レンチマークの「Options」タブからmapperの背景地図を変更することができ、例えば、「Esri.WorldImagery」などを選択すると見た目上もイケた表示となる。

最後にデータのダウンロード方法を説明する。mapperはデータを検索し、絞り込みを行い、そして、表示するのに適しているが、海洋生物研究といった一歩踏み込んだ利用のためには生物出現記録を自身の環境に取得して精査し、解析目的に応じた加工することも必要となるだろう。「Layers」タブに移行し「メニュー」ボタンから「DownLoad」を選択し、OBISの求めに応じてデータ利用者自身のメールアドレスを入力する。OBISサーバにてデータ提供の準備が整うとメールにダウンロード用のURLが届く。要求したデータ規模が小さい場合は、データ取得要求後しばらくしてmapperの画面からダウンロードが可能となった旨が表示される。データ提供準備に時間がかかる場合、適当なタイミングでメールにてデータ取得用のアドレスが届く。あとは、誘導に従い、ダウンロードを実行する。

OBISへ連絡を取る・OBISの一員になる

OBISのデータを使うためのデータ検索方法やデータ取得方法を説明してきた。しかし、データ取得後に利用者自身の専門的知見を用いてのOBISデータの検証やデータクリーニングを実施することは極めて重要である。データについて確認を要する事項が発生した場合は、それぞれのデータ提供者、または、データを提供した各国ノード担当者に連絡することが可能である。

OBISは、世界各地で行われた科学的知見を、誰もが利用できる形で集積・公開するという共通目的のもとで運営されてきた。もし、OBISデータ利用者が、利用者から一歩踏み出してデータ提供者になるなら、それは、OBISがカバーできていない時空間のピースを埋めることになる。

まずはこちらへご連絡を。

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