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「鳥羽市 海のレッドデータブック2023 〜鳥羽市の絶滅のおそれのある野生生物〜に掲載された種のリスト」が公開されました

2024/06/20

絶滅との単語はインパクトがあります。地球上から最後の一個体が消えてしまう絶滅が真っ先に思い浮かびますが、それだけで無く、生物学的にみて健全な個体群の維持が難しい状態もまた絶滅へと向かう危険な状態です。そして、かつてよく見かけた生き物を見かけなくなったことでふと気がつく局所的個体群の消失もまた、積み重なることで絶滅へと向かうことから、状況を注意深く把握しておくべき状態といえます。
鳥羽市は、全国的に珍しく、市単位で「鳥羽市 海のレッドデータブック2023 〜鳥羽市の絶滅のおそれのある野生生物〜」を取りまとめました。この本は、鳥羽市周辺の海洋生物を中心に429種の生物について絶滅の恐れがある生物として、写真と共に説明しています。今回、この書籍の取りまとめの際に基となったデータが生物多様性の国際標準規格であるDarwinCore形式に整理され、OBISとBISMaLから公開されました。
鳥羽市によるレッドリストのデータ化により、豊かな自然環境と,多様な生き物たちが生息する海とともに観光や漁業が主観産業として行われていることを示す情報を公表することとなります。これにより、鳥羽の海の生物の状況が容易に可視化できるだけでなく、世界中の研究者が容易に他地域と比較することが出来るようになりました。同時に、今回のデータ化はBISMaLをプラットフォームとする鳥羽市独自のデータベースが構築されたことも意味し、モニタリング結果の追加や情報修正が安定的に実施できる環境が整備されたことを意味します。鳥羽沿岸は、大部分が伊勢志摩国立公園として指定されていますが(https://map.navigatormap.org/site-detail?site_id=22205)、今回のデータは国立公園における海洋環境の把握のための基盤的役割を提供できます。
地方自治体が中心となり、レッドデータブックを取りまとめてデータ化するというこの先進的取組は、SDGsの14番目の目標「海の豊かさを守ろう」や、国連海洋科学の10年が掲げる7つの海の6番目「万人に開かれた海」への直接的貢献です。そして、我が国の海洋基本計画に示された「沿岸の総合的管理」を支える取り組みです。
同様の活動が、様々な沿岸自治体に広がることが期待されます。


本データセットの整備にあたり、データセットが絶滅危惧種についての情報である観点から、位置情報(緯度、経度)の精度は曖昧化されています。オリジナルの位置情報は使用目的に応じて提供可能ですが、伊勢志摩固有種であるナガシマモクや、限定的に分布するタナゴ類やイシガイ類、イドミミズハゼ、カワツルモ等々、位置情報だけでは伝えられない情報があります。問合せに際しては、モニタリングや他地域との比較、分類学的再検討等、現地調査を伴う調査・研究計画とともにデータセット連絡先(鳥羽市観光商工課観光係)までお問い合わせ下さい。

鳥羽市 海のレッドデータブック表紙:表紙デザインは各動物門の体の特徴および州浜や荒磯などをモチーフとしており、多様性や海と人の関わりなどが複雑に重なり合っている様子が表現されている

今回DarwinCore形式で整備された生物の出現地点

リンク

【鳥羽市役所のHP】

【今回BISMaLから公開されたデータセット】鳥羽市役所 (2024) 鳥羽市 海のレッドデータブック2023 〜鳥羽市の絶滅のおそれのある野生生物〜に掲載された種のリスト. (2024年6月13日閲覧)

【Ocean Newsletterでの紹介記事】「鳥羽市が作る「海のレッドデータブック」〜地域の基礎資料として〜」(2023年11月20日発行)

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