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海洋生物の多様性と分布情報のデータベース BISMaL海洋生物の多様性と分布情報のデータベース BISMaL

日本語で学ぶBISMaLの使い方

シーン別で知る、BISMaLの使い方

BISMaLを使って得られる情報の種類

  • 分類学的情報と生物出現レコード
  • 分類学的情報の構成
  • 生物出現レコードの構成

 BISMaLには海洋生物についての様々な情報が詰め込まれている。BISMaLの情報には、大きく海洋生物の分類学的情報と生物出現レコードがある。分類学的情報とは和名、学名、門綱目科属種などの分類体系、学名や和名の出典、映像画像で構成されている。生物出現レコードとは特定の生物が、いつ、どこで、どのぐらい、いた/いなかったを定められた形式で記録したデータであり、学名単位や関連する調査単位で取りまとめられて地図上の点として表示される。

学名や和名がわかっている場合(学名に対応する和名を調べる、など)

  • Acanthocephalaって何の生物?
  • 緩歩動物の学名は?
  • 緩歩動物門 v.s. 真クマムシ綱

 論文に書かれた学名に該当する日本語の生物名称を思い出せない事は無いだろうか。例えば、「Acanthocephala」に対して「鉤頭動物門」が瞬間的に出てくるなら理想的ではあるが、そもそも自身の脳ミソにその単語が無いこともあるだろう。そういうときこそ、BISMaLのトップページにアクセスし、検索窓にAcanthocephalaと入力すると、Acanthocephalaのページが表示される。逆のパターンとして、論文を書く際になじみの無い学名を書かねばならないとき、例えば、「緩歩動物」の学名を知らないとき、BISMaLを検索することで緩歩動物のページから学名の綴りを知ることができる。BISMaLを使う最大のメリットは検索後の個別の分類群のページに表示される分類ツリーにて姉妹群を俯瞰できるところにある。「緩歩動物」を例に取れば、論文で言及すべき分類群が真に「緩歩動物門」なのか、あるいは、より絞り込まれた下位階級の「真クマムシ綱」であるべきなのかについても、分類ツリーをいじりながら調べる事が可能である。

海洋生物に関して漠然とした記憶しか無い場合

  • 「あの生物は確か巻き貝の一種だったか、、、な?」と思ったとき
  • 「あの生き物はエイ類だったか、、、な?」と思ったとき

 「あの生物は確か、、、巻き貝の一種だったか、、、な?」「あの生き物はエイ類だったか、、、な?」などの場合は、コーヒー片手に分類ツリーをいじりながら見覚えのある生物名が出てくるまで海洋生物ブラウジングを楽しむのが良いだろう。

場所から調べる・特定のデータセットから調べる

  • ふと「相模湾で自分以上に調査した事例はあるだろうか?」と思ったとき
  • ふと「日本沿岸の大型褐藻類の情報はどこかにまとめられているだろうか?」と思ったとき

 「データペーパーを書こうと思っているが、自分以上に相模湾で調査した事例はあるだろうか?」「データペーパーを書こうと思っているが、日本沿岸の大型褐藻類の情報はどこかにまとめられているだろうか?」との疑問が浮かんだときはBISMaLの基本機能を用いた検索をおすすめする。
場所から生物出現レコードを絞り込む方法は、まず、topページの上部メニュー「出現レコード」を選択し、次いで表示される地図から相模湾にズームする。地図上部にある「地図で指定:ONにする」を押下し、相模湾を含む範囲の矩形を地図上で描画する(描きたい矩形の左上と右下の地点でクリック)。黒線の矩形が表示されたら、地図上部のボックスに矩形の緯度経度が自動入力されているので、その状態で「絞り込み」を押下する(もちろん、ボックスに直接数値を入力することも可能)。そうすると、生物出現レコードが絞り込まれた状態で地図、環境情報、レコード一覧がページに表示される。相模湾では非常に多くのデータが揃っている様子を確認することができる。
日本沿岸の大型藻類の出現情報といった特定のテーマで調べたい場合は、まずはtopページの上部メニュー「データセット」を選択し、その後表示されるデータセットタイトルを一通り調べるのが理想的である。データセットとは、生物出現レコードの最も基本的なまとまりであり、データセットの概要を調べることで生物出現レコードがどのような目的で、また、どのような方法で作られたのかを知ることができる。大型褐藻類に関連するデータセットとしては「Survey data of algal beds on the Monitoring sites 1000 project, BDCJ」や「Kelp Dataset」等の海藻に関係するデータセット名がみつかる。例えば、Kelp Datasetを選択すると、データセットの概要やデータについての連絡先を見ることができる。このデータセットでは日本沿岸を取り囲むようにコンブ類の出現データが27,189件まとめられていることがわかる。
上記二つの事例のように、検索の結果から多くの出現レコードがBISMaLに整備されていることが判明した場合、手持ちのデータをデータペーパー化する意味は無いだろうか?全くの誤解である。検索結果を今一度検証して欲しい。地図表示をズームすると、ポイントが疎の部分がたくさんある事に気がつけるだろう。あるいは、集められたデータの調査期間の中にもデータが無い期間があることにも気がつけるだろう。海洋生物多様性が非常に高い日本沿岸では、過去から現在にいたるまで、全分類群の情報が網羅的に収集されている地点は、未だ無い(残念なことではあるが)。

海洋生物の生息環境を調べる

  • 生息地で実際に観測された水温や塩分を知りたいとき
  • BISMaLが推定する水温や塩分を知りたいとき
  • 生物出現レコード地図に任意の環境変数の等値線を描画したいとき

 特定の人以外は思いつかないであろう仮想の疑問「ゴエモンコシオリエビってどんな環境に生息しているのだろうか?」を例にする。トップページの検索窓にゴエモンコシオリエビと入力し、表示されるゴエモンコシオリエビのページの中段には記録されている深度、水温、塩分がヒストグラムとして表示される。水温と塩分について、ゴエモンコシオリエビ観測時の実測定データは薄水色で表示され、北西太平洋海洋長期再解析データセットを参照した値である場合は青色で表示される。研究用途の場合はグラフよりも数値として利用したいであろう。その場合は、生物出現レコード概要タブの「生物出現レコード→」ボタンを押下すると、生物出現レコードを詳細に確認することができる様になる。特に、ページ最下部に表示されている各出現レコードの一覧から水温や塩分値を参照する事ができる。なお、実測値は下線無し、推定値は下線あり、である。表示件数をデフォルトの「10件」から「500件」に増やし、コピペするのがオススメである。さらに発展的な使い方としてページ上部にある「地図の環境データ表示設定」から「水温(℃)」を選ぶと任意の時間、任意の水深帯の等値線を出現レコードに重ね合わせることができる。

データ取得の実際

分類学的情報を取得する

  • BISMaLの分類学的情報を網羅的に取得したいとき
  • 個別の分類群の情報を取得したいとき

 BISMaLで整備されている分類学的情報はWebブラウザ上で閲覧するだけでなく、手元にダウンロードして利用することもできる。分類学的情報のダウンロード方法としては、網羅的に取得する方法と、個別の分類群のページから取得する方法がある。トップページ上部のメニュー「生物分類ツリー」を選択すると、BISMaLが整備している分類群ツリーを参照できる。デフォルトではツリーが展開された状態となっており、各分類群名の右側にダウンロード用アイコンが表示されている。仮に、BISMaLの整備した全ての分類群情報を取得したい場合、最も上位の階級である3つの「Domain」の横の「-」(マイナス)をクリックし、Domain毎に3回ダウンロードすることでBISMaLの全ての分類学的情報を取得できる。個別の分類群ページからも分類学的情報を取得できる。例えばツクシウミサボテン属を検索し、表示されるページ上部にあるダウンロードアイコン「分類群情報」をクリックすると、ツクシウミサボテン属の分類学的情報を取得できる。必要に応じて配下の分類群の情報を含める/含めないを選択することもできる。

Advanced Searchを使って生物出現データを絞り込み、取得する

  • ふと「1985年以前の水深100-200m層でネット採集による多毛類の記録はあるか?」と思ったとき

 BISMaLの基本機能として分類群単位での検索、場所からの生物出現データ選択やデータセット単位での選択があるが、それらを組み合わせた複雑な生物出現データの絞り込みも可能である。「1985年以前の水深100-200m層でネット採集による多毛類の記録はあるか?」という仮想事例の場合を考える。BISMaLトップページの「生物出現レコード」から、「Advanced Search」をクリックし、「eventDate:」の右側ボックスに1985、「depth:」に100200とそれぞれ入力、さらに「DwC全項目一覧から選択」を押下して出現するウインドウの「samplingProtocol」をチェックし「OK」を押下、新たに追加された「Event:samplingProtocol」のボックスにnetと入力し、最後に「絞り込み」ボタンを押下する。この段階で「scientificName」にPolychaetaまたは多毛綱と入力して絞り込む事も可能だが、絞り込まれた後の「レコード一覧」にある「scientificName」項目にて多毛綱と入力とするのも良い。さて、生物出現レコードは見つかっただろうか?

BISMaL上に自分のデータセットを開設する・BISMaLの中の人と連絡を取る

 BISMaLの生物出現レコードは日本周辺で行われた科学調査の成果である。それらは研究者、研究グループ、機関、組織に帰属している。同様に本稿の読者も自身の保有する調査結果をBISMaL上で公開することができる。もちろんこれまで説明してきたとおり、BISMaLの生物出現レコードは国際的に定められた形式であるDarwin Coreである事から、公開に際してはDarwin Coreに準拠した形式に変換することが求められる。BISMaLへのデータ提供方法の詳細はJ-OBISのHPの該当箇所を参考にして欲しい。J-OBISの中の人とBISMaLの中の人は、ほぼ等しく海洋研究機構に属している。