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【トピックス】横浜市環境創造局環境科学研究所が実施している生物相調査の報告書「横浜の川と海の生物」から底生動物についてのデータが公開されました

2023/10/06

横浜市では1973年から継続して川や海に生息する生物を調査し、報告書「横浜の川と海の生物」としてとりまとめています。約50年の長期にわたり、同一の水域で精密な調査が行われてきたこと自体にも価値がありますが、それらが調査報告書としてとりまとめられ、PDFファイルとして誰もが参照できている価値は計り知れません。例えば、横浜の川と海の生物(第1報)を読むと、はしがきには、1973年当時の高度経済成長終盤を色濃く反映するように、水質汚濁有害物質などの単語とともに「魚が住み、釣りや水遊びがたのしめる海や川を、市民の手にとりもどせること」という当時の横浜市の将来計画が書かれています。また、第2編海域には、八景島などが造成される前の海岸線の図や、漁師さん達が語る1973年当時の海の変化もわかりやすく掲載されています。時を一気に進めて、最新版の横浜の川と海の生物(第15報・海域編)第一部を読むと、2020-2021年には、東京湾における生物相の外洋化の傾向を報告しているほか、新たな変化として水温上昇等を原因とする南方化の兆しが報告されています。

2023年の夏は史上最も暑い夏であったと言われていますが、誰に言われるまでも無く、普段の生活の中で実感を伴っていることでしょう。一方で、海洋温暖化が沿岸生物相に与えている影響を普段の生活の中で実感することは、なかなか困難です。しかし、長期にわたって蓄積されたデータを比較することで、環境変動を確実に把握することができます。

今回、横浜沿岸で行われた生物調査データは生物多様性情報の国際規格であるDarwinCore形式としてとりまとめられました。これにより、横浜市の生物調査データは、世界中から検索可能となり、アクセス可能となり、世界中のDarwinCore形式のデータと統合可能となり、そして、オープンデータとして誰もが再解析可能になりました。まさに、近年の科学データに求められているFAIRFindable:見つけられる、Accessible:アクセスできる、Interoperable:相互運用できる、Reusable:再利用できる)データです。

今回整備された先駆的な調査結果は、研究や教育活動で活用されることが大いに期待されます。

「横浜の川と海の生物」

東京湾西岸の横浜市沖をカバーする調査点。左図:東京湾全景、右図:横浜市沖近景。データの緯度経度は0.01度単位に丸めてあるが(橙点:代表地点、青円:誤差範囲)、研究用途として必要な場合はオリジナル値も利用可能

リンク

[横浜の川と海の生物]
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/kankyohozen/kansoku/science/shiryo/kawatoumi/

[BISMaLデータセット]
Yokohama Environmental Science Research Institute (2023) Marine benthic animal data along Yokohama City Coast. Available at https://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/e/dataset/yokohama_esri_benthic_animal. Accessed on YYYY-MM-DD.

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